2015年9月17日
伸びる野球選手の条件
master (2015年9月17日 00:04) | トラックバック(0)日に日に秋の気配が深まります。みなさん、お元気ですか。こんにちは。穎才学院教務です。
9月も後半になって日本プロ野球もシーズンの佳境に入りました。今シーズンは、いわゆる「トリプルスリー」(打率3割台、ホームラン30本以上、盗塁30個以上)を達成することが確実視されている選手が2人、シーズン200本安打を達成した選手が1人。打撃部門で選手の素晴らしい活躍が続いています。
その中で、シーズン200本安打を達成した秋山翔吾選手について、スポーツ新聞で興味深いエピソードが紹介されました。
「僕のような突然変異系は30年後には『誰? あのバク転の人だよね』みたいになるから大丈夫です。普通に考えて、僕の子供とか、もっと後の人からしたら、そうなるんですよ。もし何年か(活躍が)続いて、実績が出てきたら認知されるし、名前が語り継がれるけど。今のところは(ポッと)出てきただけだから。そっとしておきましょうよ」と話したこともあった。(2015年9月16日サンケイスポーツ)
7月14日のコメントだそうです。ものすごい勢いでヒットを量産し、打率が4割に迫らんとしていた時のこと。そのときに自分自身の活躍を「突然変異」と言うところに、秋山選手の知性が感じられます。
また、「あのバク転の人」というのは、往年の西武・ソフトバンクの名選手、秋山幸二氏のことです。「西武の秋山」といえば、「バク転の秋山幸二」というのは、彼のプロ野球の歴史に対するリスペクトの表れです。
誰が考えても秋山翔吾選手の野手としての能力は高いのに、彼だけはそう思っていない。おそらく、秋山翔吾選手は「自分は(まだまだ)野球が下手だ」と思っているのでしょう。「自分は練習しなければならない」という己の未熟についての痛切な自覚がおありなのでしょう。そういう自覚があるスポーツ選手は、コーチがもう止めろと言っても、練習を続けると言われます。
また、秋山選手は「あ、この人が私のコーチだ」と直感できるのでしょう。ここでいう「コーチ」とは、別にチームのコーチである必要はありません。書物を読んで、「あ、この人のいうやり方でやってみよう」と思って、会ったことのない人を「コーチ」に見立てることも可能です。毎日の生活の中で、ふと気になった何かを、瞬間的に「お手本」として、それを身につけることができる。そうすれば、毎日の至る所にお手本あり、ということになります。ただし、そのためには日頃からいつもアンテナの感度を上げて、「コーチ(=お手本)を求めるセンサー」を研ぎ澄ましていることが必要です。
そして、秋山選手はきっと「コーチをその気にさせる」のが上手なのでしょう。コーチを「教える気」にさせるのは、「お願いします」という選手のまっすぐな気持ち、「師」を見上げる真剣なまなざしだけです。それは、秋山選手の場合、野球に対する真剣な気持ちと言っても良いでしょう。これはあらゆる「弟子入り物語」に共通するパターンです。このとき、弟子の側の才能や経験などは、問題になりません。なまじ経験があって、「わたしはこのようなことを、こういうふうな方法で習いたい」というような注文をコーチに向かってつけるようなことをしたら、これもやはり弟子にはしてもらえません。それよりは、真っ白な状態がいい。まだ何も書いてないところに、白い紙に黒々と墨のあとを残すように、どんなこともどんどん吸収するような、練習する側の「無垢さ」、コーチの教えることはなんでも吸収しますという「開放性」、それが「師をその気にさせる」ための力であり、伸びる野球選手の構えです。
秋山選手が身に備えているだろうと推測される、この三つの条件をひとことで言い表すと、「ぼくは練習したいです。コーチ、どうか教えてください」というセンテンスになります。高校時代・大学時代の数値で表せる成績や甲子園出場などの問題ではなく、たったこれだけの言葉。これが私の考える伸びる野球選手の条件です。「野球センス」と内実と言ってもいい。このセンテンスを素直に、はっきりと口に出せる人は、もうその段階で一流のプロ野球選手です。そういう選手は、チームスタッフやチームメイトをリスペクトすることが出来る、みなから信頼される野球選手になるでしょう。
逆に、どれほど実績があろうと、才能があろうと、このひとことを口にできない野球選手は「伸びない選手」です。それは長打力がないとか、守備が下手だとか、そういうことではありません。「練習したいのです。コーチ、教えてください。」という簡単な言葉を口にしようとしない。その言葉を口にすると、とても「損をした」ような気分になるので、できることなら、一生そんな台詞は言わずに済ませたい。だれかにものを頼むなんて「借り」ができるみたいで嫌だ。そういうふうに思う自分を「プライドが高い」とか「気骨がある」と思っている。そんな選手は、決して一流のプロ野球選手にはなれません。そういう選手は、チームスタッフは「下っ端」、チームメイトは「自分を活かすための踏み台」だとしか思っていません。そんな人が信頼を集めるはずがありません。
秋山選手は、きっとチームスタッフやチームメイトをリスペクトする、みんなから信頼される野球選手でいらっしゃるのでしょう。彼のこれからの一層の活躍を予祝もうしあげます。
と、書いてみましたが、関係者の方、いかがですか。この文章の内容は的を射ていますか?
もし、的を射ていたら、これからご紹介する「学ぶ力」という文章は、野球選手の育成にも有効です。
ぜひ、御一読くださいませ。
http://blog.tatsuru.com/2011/09/02_1151.php
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